▶大企業の女性役員「2030年に30%」 政府が新目標 政治 2023年6月5日
これは日本版 Affirmative Action アファーマティブ・アクションである。皮肉っぽく言えば、日本版とは、アメリカ追随型、欧米カブレの政策である。こんなことを政府が掲げたら、大企業は「お上の言うことだから」と、これまた追随する。何が起こるかというと、あきらかに男女差別が助長され、歪みと分断が生じる。この意味を理解するのはそう簡単ではない。
「男女共同参画法」に対する批判を10年前から主張している杉田水脈議員を理解できるかどうかというのと本質的に同じ問題である。男女平等(元々は男女機会均等が正しい)という理念に、普通の日本人はだれも反対しない。当たり前である。だからと言って、役員に女性が少ないのは不平等であるから増やそうというのは間違っている。「間違っている」と断言すると、男女差別をしている、差別主義者だと糾弾されるような世の中になった。何かおかしいとは思わないのか?なぜ杉田水脈議員が、左翼政党や新聞テレビからいつも叩かれるのか?
私がアメリカでソフト開発のために人を採用し、彼らを鼓舞して効果を上げることに苦心するようになったとき、目標管理(日本でいう目標管理とは異質なMBO)項目(Objectives)の中で、一番難解だったのが Affirmative Action だった。もとより日本にはその歴史も概念もなかったから理解が難しかった。少なくとも1960年代の人権運動の時代までさかのぼって勉強しなければならなかった。
簡単に言えば、事業所がある地域(County)の住民の人種比率に応じた構成の社員を採用すべしというのが、Affirmative Actionのひとつの例である。つまり、黒人比率が3割だったら、従業員の黒人が占める割合も3割を目安とするというわけである。このことをよく理解していない日系企業が何社も訴訟(Class Action)を起こされた歴史がある。私が駐在していた80年代後半に大きな話題になった。そして二回目の駐在のときもまた同じ過ちを繰り返していた。どうして日系企業は過去から学ばないのかと不思議でもあったが、異文化の壁を乗り越えられないのだと変に納得してしまう。
もうひとつAffirmative Actionの例で納得できなかったのは、大学受験で女性や黒人が差別されているから合格者数が少ないとの主張で、一定枠の女性や黒人を入学させるようになったことだ。こうした優先枠があることで、実際には成績上位の人が入学できないという逆差別が生まれた。弱者救済や少数者救済という美名のもとに差別を助長することがある。白人女性が、このaffirmative actionのために差別を受けたと大学当局を訴える事件も起きた。数十年前の話である。
最近、Affirmative actionをめぐる訴訟で最高裁の判決が出た。ある意味、数十年にわたる論争に決着をつけたといえる。それは、「行き過ぎた弱者救済は違憲である」という判決である。大学受験でいえば、性別や人種で優先枠を設けるのは憲法違反である。個々人の経験や能力で判断すべきだという、これまた真っ当な判決である。
▶米大学の人種優遇は違憲、最高裁が判断 By Jess Bravin 2023年6月30日