9/13/2021

とこねん

  1. 奈良の方言「とこねん」は、夕涼み用の台のこと。
    • 「仕事をしもて、とこねんで食べるまっかはほんまうまいなあ」
    • (仕事を終えて夕涼みの台に座って食べるマクワウリは本当に美味しいね)
全国方言辞典の説明では、「奈良」の方言というが、実際は奈良市文化圏、南和(南大和=奈良盆地の南部)地方、吉野地方、十津川地方それぞれの方言があり、微妙に異なる。

広陵町(百済、箸尾、馬見、瀬南など)では、とこねんの一義的意味は
家族が卓袱台を囲んで食事をする板の間のことだった。過去形でいうのは、平成の初め頃から次第に使われなくなったからである。田舎作りの家には必ずといっていいほど存在したとこねんと呼ぶ板の間が、家の建て替えで消滅したため、言葉も使わなくなった。

夕涼みの台は、クーラーの普及で夕涼みの必要性が無くなっていき、夏の風物もコトバも消えていった。私の田舎では、中学生の頃までは、外にとこねんを出して、家族や村の人と夕涼みをしたものだ。そんな夏の風物詩を懐かしく思い出すのは、農村部出身の団塊世代以前の人たちだけになった。